東京・青山にお店をオープンします。
2024年 02月16日 カテゴリー:リセノ
こんにちは。やまもとです。
4月に東京・青山にお店をオープンします。
既存のお店は、
- 京都店:2013年8月オープン
- 東京店(二子玉川):2015年7月オープン
- 福岡店:2022年4月オープン
ですから、11年で4店舗目の出店、直近でいうと福岡
店から2年ぶりの新規出店となります。
本日のブログでは、店舗出店に至った経緯と、
今後の方針などを書いていこうと思います。
出店の加速と、ブランドの変遷
リセノは、もともとの素養としてECが強く、リアル
の店舗は、その延長戦上というか、補足的というか、
そのような立ち位置でした。
最初の出店である2013年当時は、ECに対して、家具・
雑貨のメーカーさん自体も、まだまだ100%の信頼を
置いていない時代。
「ECだけの会社は、商品を不当に安売りするんじゃないか。」
「ECだけの会社は、安定性に欠ける。」
そのような見解がまだまだ当たり前。
「商品を卸すためには、リアル店舗が(補償的な意味で)存在することが必須」
という条件を提示するメーカーさんが多い時代でした。
当時の僕たちは、まだ駆け出し6年目の小さな小さな
会社で、オリジナル商品は存在しないセレクトショッ
プ。
ですから、魅力のある商品をもつメーカーさんから
商品を卸してもらえるかどうかは、会社の成長にとっ
てもっとも大きな要件でした。
会社が拡大していく中で、少しずつスタッフが増え、
オフィスの拡張移転を考えた時に、
「オフィスと店舗が一体となって活動できるような
ビルに移転したい。
メーカーさんからの仕入れも拡張できるし!」
と思い、探し出したのが今の京都店の入る一棟貸し
のビルです。(現在は、本社機能は移転)
京都店の入るビル。3月には2Fも店舗にして増床オープン予定
僕は前職はWebの制作の会社ですが、そのもうひと
つ前は、店舗販売出身(大卒後約5年間)の経歴です
ので、店舗というものに愛着があったのもあります。
ただ、大きな要素として「ECの仕入れを拡張するた
め」であったことも事実です。
リアル店舗を作ったのは、そんな実を求める部分と、
経歴から来る愛着、拡張のタイミングなど、様々な
要素が重なり合って実現したのでした。
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当時のお店は、ECで扱っていたものよりも、高単価
な商品を置いたり、北欧雑貨を増やしたりと、店舗
独自の強みを追い求めたりと、まだまだ迷いの中で
のスタートでした。
やがて、徐々に京都店が軌道に乗り始めると、東京に
もお店を出店する計画が持ち上がり、2015年には二子
玉川にも出店。
この頃にも
「そんなに売れなくてもいいから、ECのお客様に
実際に見たり、楽しんだりしてもらって、ファンに
なってもらうことを目標にしよう!」
と、スタッフには声掛けしていたことを覚えています。
つまり、東京店もあくまでECの補助的な役割のみを
期待しているものでした。
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この2015年~2016年夏頃までは、リアル店舗も出店
し、仕入れも拡張。順風満帆なリセノでした。
ただ、このあと思いもよらない角度から、事業に大き
なダメージを与える出来事があり、そこからの約3年
間、リセノは大きな低迷期に入りました。
みんなが昼夜問わず懸命に働き、数々の施策を試し、
売上はそれなりにあるにも関わらず、毎月のように
赤字が続き、それまでの10年間で培った資金は、激
動の2年間で、あと1年で底をつくまでに減りました。
僕は、赤字が2年続いた後、3年目の期初のミーティ
ングで、全スタッフを集めて、こう伝えました。
「ぼくたちの会社は、いま2年連続で大きな赤字です。
今年1年おなじ状況が続けば、会社は倒産します。
ですから、この1年が勝負です。
僕も誰よりも頑張りますから、みなさんの力を貸し
てください。」
創業当初から順調で、社外からの評価も高かった当時
のFlavorですが、あっという間に倒産が視野に入るほ
どに状況はひどくなっていたのです。
そして、勝負の3年目。
この勝負の年に、芽生え始めていたオリジナル家具
を中心とした事業転換をはかり、仕入れ商品を中心と
した「セレクトショップ」業態から、オリジナル製品
を中心とした「家具ブランド」へと生まれ変わらせた
ことにより、会社は蘇りました。
奇しくも創業から丸10年が経っていました。
その翌年の2020年には「ナチュラルヴィンテージ」と
いう言葉を旗印に掲げ、よりユニークな会社に移り変
わることができました。
それからの数年間は、家具ブランドとしてより筋肉
質な経営を継続できています。
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さて、話はそれましたが、まとめると、いま僕たちは
創業時の「低価格セレクトショップ業態」から、
「中価格帯の家具ブランド」へと大きく変化しました。
セレクト業態時の売れ筋商品は、2万円のソファーで
したが、いまの売れ筋商品は、25万円のソファーです。
まったく新しい会社へと生まれ変わりました。
そして、家具ブランドへ生まれ変わったということで、
お客様の求めるものも大きく変わりました。
以前は「安くて、手軽な家具を求める方」が顧客様で
したが、いまは「高品質で、信頼できる家具」を求め
る方が顧客様です。
そうすると、以前のように気軽に買うのではなく、じ
っくりじっくり吟味して、実際に見て、触れて、座っ
てから買うべき、一生ものの家具たちです。
このブランドの変遷によって、リアル店舗の重要度が
大きく変わってきたのです。
家具業界のオンライン/オフライン購入比率
さて、紆余曲折の末にブランド自体が大きく変化し、
リアル店舗が重要な存在になってきた経緯を書いてき
ました。
以前のエントリーでも書いています。
OMOと出店計画
いまのリセノでは、WebサイトやSNSでリセノと出会
い、その後に店舗に足を運んで家具やインテリアを購
入いただくという流れがとても増えました。
また、店舗で見てからWebサイトで最終買うという
行動も多く、まさに「Online merges Offline」を体現
するかたちになっています。
さて、もうひとつリアル店舗出店を進めていく理由を
データから紐解いてみましょう。
分類 | 2021年 | 2022年 | |||
---|---|---|---|---|---|
市場規模 (億円) ※下段:前年比 | EC化率 | 市場規模 (億円) ※下段:前年比 | EC化率 | ||
① | 食品、飲料、酒類 | 25,199 (14.10%増) |
3.77% | 27,505 (9.15%増) |
4.16% |
② | 生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 | 24,584 (4.66%増) |
38.13% | 25,528 (3.84%増) |
42.01% |
③ | 書籍、映像・音楽ソフト | 17,518 (7.88%増) |
46.20% | 18,222 (4.02%増) |
52.16% |
④ | 化粧品、医薬品 | 8,552 (9.82%増) |
7.52% | 9,191 (7.48%増) |
8.24% |
⑤ | 生活雑貨、家具、インテリア | 22,752 (6.71%増) |
28.25% | 23,541 (3.47%増) |
29.59% |
⑥ | 衣類・服装雑貨等 | 24,279 (9.35%増) |
21.15% | 25,499 (5.02%増) |
21.56% |
⑦ | 自動車、自動二輪車、パーツ等 | 3,016 (8.33%増) |
3.86% | 3,183 (5.55%増) |
3.98% |
⑧ | その他 | 6,964 (8.42%増) |
1.96% | 7,327 (5.22%増) |
1.89% |
合計 | 132,865 (8.61%増) |
8.78% | 139,997 (5.37 %増) |
9.13% |
このデータは、経済産業省のWebサイトに掲載されて
いるEC化率の表を転載したものです。
見ていただいてわかるとおり、家具・インテリア分野
におけるEC化率は、約30%程度です。
これは裏返せば、70%の人たちはリアル店舗で家具や
インテリアを買っているということを示すデータです。
リセノは、現状リアル店舗が3店舗しかなく、ECから
の売上が大きい事業形態です。
「多くの人たちはリアル店舗で家具を買うのに、
リセノでは、ECの売上が高い」
という矛盾が起きています。
実際に独自に業界研究をしてみると、見事なまでに
- 高価格帯家具ブランド = リアル店舗の売上比重が高い
- 低価格帯家具ブランド = ECでの売上比重が高い
というデータになります。
つまりは「実際にお店で見て、触れて、座って買いた
いと思っている方たちに、その機会を提供しきれてい
ない=伸びしろがある」ということが、リセノの課題
であることが、見てとれます。
これが、リアル店舗の出店を進めていこうと僕が考え
る裏付けのひとつです。
また、上記のデータは「生活雑貨・家具・インテリア」
となっていますから、その中には、グラスや小物など
ECでも比較的買いやすいものも含んでいます。
つまりは、家具や大型のインテリアに絞り込むと、
おそらくEC化率は20%以下、また、安価な家具など
を差し引くと、リセノのような家具ブランドのEC化
率は、10%台前半という感じかもしれません。
そうすると、僕たちにとっては、さらにリアル店舗
の重要性は格段に高まるのです。
ITの強みを活かした「OMO戦略」
また、リアル店舗の重要性を語っていくと、相対的に
ECの重要度が下がるのでは? と考えがちかもしれま
せんが、そうではありません。
僕の考えでは、リアル店舗の出店を進めるためには、
ECの伴走無しでは、成功はありえないだろうと考え
ています。
以前のこちらのエントリーでも書きましたが、
家具小売りにおける「オンライン」と「オフライン」の重要な関係
リアル店舗を出したことでは、集客が伴いません。
デベロッパーへの出店により、自動的に集客が行わ
れるように感じるかもしれませんが、その集客はか
なり確度の低い集客です。
現代は飽和の時代ですから、例えデベロッパーに新し
い家具ブランドが出店したからといって「おっ!」と
気付いてもらえたとしても、深く興味をそそるまでに
はなかなか行きつかないでしょう。
どの家具ブランドも「生産性のフロンティア」には
すでに達しているわけで、どこの家具もある程度の
耐久性を持ち、ある程度のデザインの美しさもあり、
同価格帯の家具屋ならば、一見するだけでは一般の
お客様には、違いが分からないレベルに達しています。
生産性のフロンティア
選択しない理由とされる分岐点。
例:カレー店であれば、提供するカレーが美味しい状態。
「まずいカレーを出すお店は、生産性のフロンティアに達していないよね。」
つまり「モノ」だけを見ても違いが分かりづらく、
実際に使用しても、どれもよく出来ている。
その様子は、まさにテレビの「格付けチェック」で、
間違いを頻発する芸能人と同じ状況なのです。
ですから、なおのこと
「同じように見えても、実は中身がまったく違う。」
「背景の活動に、共感している。」
「このブランドのやることを、信頼している。」
というような情緒的便益を伴う必要があるわけです。
そして、この情緒的便益を顧客に感じてもらうには、
店頭の売り場だけでは、表現しきれません。
Webを通じた様々な情報発信によって、顧客からの
深い共感を得ないと、情緒的便益は発生しないのです。
ですから、リアルの顧客を店舗に惹きつけるためには、
Webの重要性はますます高まるばかりなのです。
青山店のオープンを誰よりも楽しみにしています。
さて、長々と書いてきましたが、今回のエントリーは
青山店の出店に関する情報リリースに際して、リセノ
のいままでの道のりや、今後の方向性についても書き
記してきました。
会社も17期目になり、僕自身も立ち上げ時には28歳
だったのが、今では44歳になりました。
あの頃に勢いでスタートしたリセノですが、少しずつ
少しずつ成長と停滞を繰り返し、時には大きな荒波に
もまれながら、それでも一歩ずつ前に進むべく努力
してきました。
あの頃には、自分たちが青山にお店を出すなんて想像
だにしませんでしたが、そこにチャレンジできるだけ
のところまで来れたんだなと感慨深くもあります。
東京のど真ん中への出店が成功するのか。
また、この出店をきっかけに新しい何かが生まれるのか。
それはまだ分かりませんが、これまでやってきた自分
たちの努力と真摯な姿勢を信じて、またひとつ成長で
きるように、がんばっていこうと思います。
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今後の4年間で、都内を中心に大阪・神奈川エリアを
含む10店舗まで拡張する計画をしています。
また、現状は路面店ばかりで出店していますが、条件
面などで折り合いがつけば、デベロッパーへの出店も
検討しています。
インテリアの楽しさを、もっとたくさんの人たちに
伝えるために、三位一体となって、リセノは影響力を
高めていきます。
「商品・セオリー・表現」の三位一体戦略
その頃には、インテリアを楽しんでいる人が増えて、
大変な毎日を、少しでもリラックスして、明るい気
持ちで過ごせる人が増える様に。
そんな未来を夢見て、一歩ずつ頑張っていきます。
では、また来月に。
PS.
ちなみに3月初頭に京都店の旧オフィスとして利用し
ていた2Fを、店舗として増床オープンします。
いままでの京都店は売り場面積が40坪ほどと、リセノ
の中では一番小さなお店でしたが、この増床によって
計80坪の最も大きな店舗に生まれ変わります。
移転の際にファサードにシンボルツリーとして植えた
トネリコは、3Fにまで届く大きさに成長し、2Fからは
その力強い姿を大きな窓から見ることができます。
こちらも楽しみにしていただけると嬉しいなと思います。