今月は、ブランドの方向性について、考えている
ことを備忘録的に。
モノゴトの視点には、常に相反する視点があります。
たとえば、価格。
安いは「お得」というメリットの視点もあれば、
「安っぽい」というデメリットの視点もあります。
高いなら「高級感」というメリットの視点と、
「高すぎ」「価値に合わない」という視点があります。
人なら「美人は素敵 ⇔ 美人は飽きる」ですし、
性格なら「真面目で勤勉 ⇔ 面白みがない」です。
無垢材家具なら
「丈夫・経年変化 ⇔ 重い・変えづらい」ですし、
プリント家具なら
「無垢家具と遜色がない ⇔ 安っぽい」でしょう。
モノゴトは、性質が変わらなくとも、常に良い点と
悪い点を内包し、どちらを見るかによって相反する
性質を見つけることができます。
相反する視点があるモノゴトについて、自分が
どちらが見えるかは、人の感性により変わりますし、
また同じ人でも、その時々の心境や環境によって、
逆の視点に立つこともあるでしょう。
どんなことがあっても視点がぶれない人は、
いわゆる「こだわり」がある人であり、「頑固」な
人でもあります。これさえも相反視点ですね。
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経営するということにおいても、歴が長くなるほど
相反視点に対して、どういうスタンスを保てるかが
強く影響してくると思います。
「あのブランド、イケてるよね!」と言われる様な
一本スジの通ったブランドを作っている会社は、
こだわりが強くあり、自らの道を貫いている会社です。
スタンスを持っていて、強いアイデンティティのある
相反視点に対してぶれない会社と思います。
個人的にそんな会社やブランドに憧れを強く持って
いますが、相反視点をぶれさずにブランドを牽引する
というのは、並大抵のことではないと思います。
なぜなら、市場は常に変化しており、ユーザーが
反応する興味や購買意欲も大きな流れに委ねられる
ため、経営者としては、その大きな流れにある程度
沿っていこうとする考えが働くからです。
また、僕のように比較的若くして経営者になると、
気力も体力も十分にあり、満たしたい自尊心も大きい
ため、どうしても会社を強く、大きくと考える力も
働くとも思います。
ぼくたちの会社も、一時期はより高い売上を求め、
商品の取り扱い点数を拡大し、前年売上を越えること
を目標にしていた時期が長くありました。
会社を興したころには、月商200万、社員は10人以上
にしたくないねと話したりしていましたが、
いつの間にやら、あっという間にそんな思いはどこか
に消えて、拡大路線を突き進んでいました。
相反視点も常にゆらゆらと両側に揺れぶれながら、
こっちが素敵なのか、あっちが素敵なのか、
どうすればもっと売れる様になるのかを考え、
大きな戦いの中を全力で走っていました。
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そして、2017年末の今。
現時点での思いは、売上の拡張をしても、その先は
常に戦いの繰り返しなのではないかということです。
どれほど売上を拡大しても、結局はステージごとに
ライバルが現れ、ボリュームの維持に追われます。
常に変わる市場に沿いながら、大きく膨らんだ母体を
維持する為に、さらに高い売上を求める。
ライバルとしのぎをけずり、さらに戦いつづける。
これが延々と続くと、いつしか体力も気力も、
感性も途絶えたころに、ブランドは存亡の危機を
迎えるのではないかと思います。
自分が全力で頑張った、かつて勤めたブランドも
隆盛の後に、多くのスタッフの行き場を奪って、
消滅してしまいました。
つまり、売上の拡大は、経営の成功ではないの
ではと考えるに至りました。
売上の拡大ではなく、今向かうべき道は、
何年経っても色あせないニッチな場所。
誰もが考えるショップとしての売上拡大を第一義と
せず、他がやっていない方向に進んでいく。
10年間に相反視点をゆらゆらと迷い続けながら、
たくさんの経験を経て、ようやく少しだけ気づく
ことができました。
そこで、今は少しだけ、ほんの1度の角度だけ
ハンドルを切っています。
ほんの1度だけ左に切ったハンドルは、5年もすれば、
いままでの景色とは、大きく違う場所にたどり着くの
ではと考えています。
こだわりのあるブランドは、相反視点をぶらさずに
進んできたと前述しましたが、本当のところ、実は
僕はそんなことはまったく思っていません。
そんなブランドこそ常に1度のハンドルを切り続け、
すこしずつ、すこしずつ進む先を調整しながら、
ニッチで強固な立ち位置にたどり着き、圧倒的な
ブランドに成長したのだと思います。
僕たちもそこを目指して、ハンドルを少しだけ
真っ直ぐから動かせた1年でした。
来年も頑張っていこうと思います。
では、良いお年を。また来年に。