こんにちは。やまもとです。
今月は「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」と
いう本を読んで考えたリセノ事業の競争戦略について
書いていこうと思います。
この本は、2013年に発売された本で、星野リゾート
代表の星野さんが監修に入られているビジネス書です。
現代は、商品やサービスが成熟し、各社が差別化を
実現しづらい時代です。
星野さんの例え話でも、かつては「まずいコーヒー」
というものがあったので「おいしいコーヒー」を出し
ていればお客様が来店してくれた時代があったが、現
代においては、コンビニで100円で買えるコーヒーで
さえも美味しくなり「おいしい」という要素は、差別
化要素にならないというお話があります。
競合他社と差別化を行い、独自の強みを打ち出すのが
非常に難しい時代なのです。
大事なのは「どこに力を入れて、どこはやらないか」
という「選択と集中」です。
この本では、経営に関わる競争力の源泉を
- 価格
- サービス
- アクセス(買いやすさ)
- 商品
- 経験価値
の5つを挙げ、さらにそれらのレベルを
- レべル3 市場支配
- レベル2 差別化
- レベル1 業界水準
と区分しています。
そして、この5つの要素のうち
- 1つでレベル3を達成する
- 1つでレベル2を達成する
- 残り3つはレベル1を達成する
というバランスで行うことで、競合他社との差別化が
でき、事業が飛躍すると述べられています。
書籍より引用
この本について僕が知ったのは約1年前で、その頃に
も読んだのですが、今回新たに読み直してみました。
僕は、ビジネス書を読むときには、大事だと思う所に
は、本の端に折り目を付けて、赤ペンで線を引いて、
その時に思ったことを書き込むようにしています。
そして、1冊を読み終わった後には、その折り目をつ
けた部分、線を引いた部分、書いたコメントを、1枚
の用紙にまとめておくようにしています。
成功へ近づく、良質な思考を作る方法
こうすることで、たくさんの本で気になる点を集めた
自分だけの参考書ができあがるというわけです。
その自分だけの参考書は、現在約200ページにまで
なりました。
事業の方向に迷ったときに改めて見返し、そこからヒ
ントを得て、また次の戦略を考える... といった具合
に使い、会社を本を参考に運営してきました。
以下は「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」を
1年前に読んだ時の僕のメモです。
競合とのコモディティ化を防ぐためには、
- 価格
- サービス
- アクセス(買いやすさ)
- 商品
- 経験価値
の5つの要素のうち
1つで「市場を支配」し(世界で通用するレベルに達している)
もう1つで「差別化」に成功し、
残りの3つで「業界の標準」(平均)レベルを保っている。
5段階評価で言えば、5点が世界レベル、4点が差別化レベル、3点が業界標準レベル、そして1点は受け入れがたいレベルだ。
理想的なスコアは、5、4、3、3、3である。
1年前の時点では、星野さん監修の名著であると言わ
れるこの本に対して、僕が大事だと感じた点はたった
これだけでした。
つまり、経営者として尊敬する星野社長の推薦する本
だということで手にとったものの、その時の僕では本
書がもつ本当の意味を理解できず「とりあえず読んだ」
というレベルにとどまってしまっていたのでした。
理解できるレベルに至っていなかったのです。
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それから、1年。
今回あらためて1年ぶりに再度、競争戦略について学
びたいと思い、再度読んでみました。
そうすると、どうでしょう。
1年前にはまったく心に響かなかった5つの要素につい
て、リセノ事業と照らし合わせながら考えていくこと
が出来るようになっていました。
たった1年ですが、僕なりに事業を考え続けてきた事
で、このビジネス書の真の活用方法が理解できるよう
になっていたのです。
「自分自身も、事業も、きちんと成長できている!」
そう思えると、嬉しさが込み上げてきます。
リセノ事業において、はっきりと「レベル3」と「レ
ベル2」として、選択と集中を行うべきポイントが見
えるようになってきたということです。
このブログを読んでいただいている方は、リセノの
ことをご存知の方が多いでしょう。
あなたから見て、リセノの競争優位として力を入れる
べきポイントはどこだと思いますか?
- 価格
- サービス
- アクセス(買いやすさ)
- 商品
- 経験価値
- レべル3 市場支配として、競合他社から格別に秀でている要素
- レベル2 差別化として、競合他社よりもうまくできる要素
- レベル1 業界水準として、競合他社くらいで良い要素
この5つのうちで、リセノが得意としていて、そこを
さらに伸ばすことで、レベル3、2にそれぞれ値するの
は、どれだと思われますか?
僕が考える「レベル3、レベル2」としてリセノが競合
他社に打ち勝ち、さらに成長できる要素は、ずばり以
下です。
書籍より引用・加筆
- レべル3(市場支配) = アクセス(買いやすさ)
- レベル2(差別化) = 経験価値
- レベル1(業界水準) = 商品・サービス・価格
です。
どうでしょう?
リセノの競争優位の要素は、イメージと一致しましたか?
上記のように考える理由をお話しましょう。
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まずは「レべル3(市場支配)=アクセス」を選んだ
理由について。
本によると、アクセス(買いやすさ)は、
- 物理的なアクセス
- 心理的なアクセス
の両方を意味します。
物理的なアクセスとは、その名の通り、近所にお店が
あったり、欲しいものが見つけやすかったり、お店が
使いやすく、アクセスしやすい状態です。
コンビニなどは、アクセスで市場支配している事業
の典型でしょう。すぐ近くにあり、24時間開いていて
どこの棚に何が置いてあるかは、みんな理解しています。
物理的アクセスが良いことで、多少高いと分かって
いても、ついつい買ってしまう。これはコンビニの
最も強い競争優位性です。まさにレベル3ですね。
また、Amazonなども、24時間お買い物ができるのは
もちろんのこと、住所やカード番号の入力が不要で、
翌日には届いて、自分の好みのアイテムもレコメンド
されている... というアクセスの王者ですね。
コンビニやAmazonを筆頭に、物理的アクセスによっ
て、市場を支配している会社はたくさんあります。
ただし、リセノはもちろんのこと、この物理的アクセ
スで市場支配しようとは考えていません。
重要なのは、もうひとつの「心理的アクセス」の方です。
心理的アクセスとは、つまりは
- 購入のハードル
- コミュニティ感覚
の2つです。
(僕自身も長くそうでしたが)インテリアにおける
多くの人は、以下の様なループをするのではないか
と思っています。
1. お部屋を素敵にしたいという気持ちが芽生える
↓
2. 雑誌、SNSなどで情報を調べる
↓
3. 自分なりに家具やインテリアを買ってみる
↓
4. ある程度やって、いったん止まる。
(うまくいかないので、興味が減ってくる。また、ほかのことに興味がうつる)
↓
5. あきらめる。完全に止まる。
↓
(6. しばらくして、1に戻る(繰り返し))
こんな感じの方が多いのではないでしょうか。
一人暮らしのタイミングや、引っ越しのタイミング
など、インテリアへの興味が芽生える時があるので
すが、うまく行かなかったり、満足できるまで続け
られる方が少ないのです。
「衣食住」とは言いますが、「衣」は対外的に求めら
れたり、リアクションを得られる「顕示欲」に直接的
に紐づいてるため、必然的に諦めることが少ないです。
また「食」も三大欲求と紐づいているため、日々みん
なの関心を惹いてやみません。
それに比べて「住」は、「衣食」よりも欲求とのつな
がりが弱く、あきらめたり、興味を失ったりというこ
とが起きがちな分野です。
基本的には「自分が良ければ良い」というジャンル
でもあるので、関心と欲求が持続しづらいのです。
ただ、人生を豊かに過ごすために、また、日々の心身
の疲れをいやすためには「住」は、実はとてもとても
重要です。
みなさんもそれを本能的には分かっているので、先ほ
どの「 1. お部屋を素敵にしたいという気持ち 」に、
何度も繰り返し戻るのだと思います。
さて、ということは、リセノがレベル3を目指すため
の「心理的アクセス」とは、どういうことでしょう。
答えは、実はシンプルです。
1. お部屋を素敵にしたいという気持ちが芽生える
↓
2. いろいろと雑誌やSNSを調べだす(←ここでリセノと出会う)
↓
3. リセノのセオリーで、家具やインテリアを買ってみる
↓
4. どんどんお部屋が良くなるので、楽しくなる
↓
5. 暮らしが良くなり、ずっと楽しみ続ける。
4の部分で「うまくいくか、いかないか」が分岐点なのです。
(勉強やスポーツなどでも一緒ですね。)
では「うまくいく」ために大事なことは何でしょうか?
そう。それはずばり「先生」であり「仲間」です。
先生は、うまくいかないときに、そっと手を差し伸べ
てくれて、その小さなつまづきを乗り越えさせてくれます。
仲間は、うまくいかないときに、励まし、ともに悩み、
そっとそばにいてくれます。
こんな先生や仲間がいるからこそ、うまくいかない時
を乗り越えて、より上達していくのです。
ただ「お部屋づくり」における先生や仲間は、日常
生活で出会うことは、そうそうありませんね。
そして、僕たちのことを知っていただいてる方はもう
ご存知のとおり、僕たちの活動とはインテリアの先生
であり、仲間であろうということなのです。
そのために、リセノは多くのリソースを使って、イン
テリアの楽しみ方を、インテリア初心者の方に向けて
発信しています。
この分野においては、リセノが日本において(もしか
すると同一分野の世界において)、もっとも豊富なコ
ンテンツと、確からしい理論を保持していると自負し
ています。
ですから、リセノの競合優位性は
レべル3(市場支配) = アクセス(買いやすさ)
だと言い切れるのです。
また、
レベル2(差別化) = 経験価値
においても、アクセスと結びつきやすい性質を持って
います。
心理的アクセスによって、僕たちのことを信頼いただ
き、そのうえで僕たちのお店を訪れ、製品を購入いた
だくという価値は、他の競合企業には存在しないから
です。
唯一無二の経験価値なのです。
この2つのレベル3、レベル2には、強いこだわりを
もって事業を行っていきます。
そのほかの3つ
- 価格
- サービス
- 商品
についても、もちろん疎かにするわけではありません。
例えば、商品については、オリジナル家具の開発にあ
たって「アクセス」を起点とした独自の開発方式を
取り入れています。
僕たちの製品開発は「美しいモノづくり」という視点
ではありません。
生活の「不」を解消し、より良い生活を実現するため
に必要な製品を開発しています。
Re:CENO product|コンセプト
ですから、製品の企画においても
- どんなかっこいい家具を作るかではなく、どんな家具なら暮らしが良くなるか
- 暮らしの中での使い方と効果が明確か
- スタイリングとしての価値を具現化できるか
ということを起点とし、製品に付加価値を与える様に
設計しています。
これもすべて購入いただいた方が「あきらめユーザー」
にならないように、「楽しみユーザー」になるように
考えています。
つまり「アクセス起点の商品づくり」なのです。
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さて、今回の記事では「ファイブ・ウェイ・ポジショ
ニング」という本を起点として、リセノの競争優位要
素について紐解いてきました。
1年前とは違う視座に立って、自分たちの優位性を定
義できたのは、大きな収穫でした。
現在は「センスのいらないインテリア スタイリング
編」を執筆、リリース中なので、こちらが完成した際
には、より分かりやすいアクセスの優位性を得られる
と思います。
世の中の大変な毎日を過ごしている方たちの暮らしを
すこしでも良くできるように、さらに頑張っていこう
と思います。
では、また来月に。
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最後に、この本を読んだ今回のメモを付記しておきます。
<アクセス>
アクセスのレベル3(市場を支配している):解決策を提示してくれる。苦境から救い出してくれる。
アクセスという要素の2つの力学
・物理的アクセス = 近くにある。コンビニ
・心理的アクセス = 買うハードル
amazonは、書籍やCDへのアクセスを提供しているだけでなく、ほかの消費者のレビューを掲載するなどのサービスを通じて、コミュニティへのアクセスも提供している。
消費者が積極的に企業を選びだす最高レベル(レベル3)では、消費者はアクセスを、簡単さと便利さだけで定義するわけではない。
ライフスタイルにまつわる問題に「解決策」をくれるかどうか、心理的なきずなやコミュニティ感覚を提供してくれるかどうかでも定義している。
心理的なアクセスは多くの場合、経験価値と深く結びついている。そういう意味で、アクセスは、その企業ならではの経験価値の入口の役目を果たしている。
スターバックスは、コーヒーを飲むためというより、自分によく似た人たちが集う、コミュニティへのアクセスを求めて、人々は店にやってくる。
<経験価値>
企業が経験価値で市場を支配したいなら、カギとなる要素は、明らかに顧客と従業員とのやり取りだ。 インタビューで消費者は、経験価値で最も重要な点として、次のことを挙げている。
- 従業員が、礼儀正しく敬意を払ってくれる。
- 消費者が、大切なお客様として扱われる。
- 従業員が、消費者の要件に積極的に対応してくれる。
- 従業員が、自社の商品やサービスのイメージを高めている。
- 従業員の服装が、企業の雰囲気を反映・補完している。
- 店内の装飾、表示、レイアウトなどが見ていて楽しい。
- 消費者の経験価値を高めるような、BGMやビデオが店内で流れている。
リセノでは、
アクセス(買いやすさ) 5 = 買うのが難しいインテリアにおいて、失敗を減らし、理想の部屋を作るための解決策(セオリー)を提示する。 また、インテリア好きというコミュニティに属する感覚や場所を提供する。
経験価値 4 = 従業員はお客様に敬意を払い、ほかのお店では実現できないメンターとしての価値を発揮し、お客様にインテリアの楽しさを伝える
価格 3
サービス 3
商品 3
を目指す。