

こんにちは。やまもとです。
今月のテーマは「小売りとメディアのリソース比率
を変える」です。
僕たちは、家具をたくさん売るだけのお店を目指していない
僕たちは、ECと実店舗を運営するいわゆる小売り
の会社です。
会社の収益も99%は、家具や雑貨などのインテリア
製品を販売して得ています。
小売りとしての機能を内製にて保有しているため、
Web/実店舗の店作り、カスタマーサポートといった
フロント部分から、製品企画・開発、システム設計
といったバックヤード部分まで、小売りに必要な
要素は内製でひと通り持っていて、そのクオリティを
高めていることが、最大のストロングポイントです。
小売りとしての機能を創業から最も重視して伸ばし
てきましたし、なかでも「ECを運営する」という点
においては、業界随一のレベルに達していると自負
しています。
また、実店舗の重要性については以前に以下の記事
でも書きましたが、今後、さらに重要になってくると
考えています。
家具小売りにおける「オンライン」と「オフライン」の重要な関係
リセノは、まだ京都と東京の2店舗しかありません
ので、小売業として、ここもさらに強化していく
予定です。
製品開発についても、僕がほぼすべての企画とデザ
インを行っている状態ですので、今後はスタッフが
それぞれの強みを活かした企画・デザインを出して
くれることで、さらに良い製品開発が出来るように
なることを確信しています。
カスタマーサポートにおいても、今年リリースした
プロサポートも非常に好評ですし、人員増加と教育
体制の整備が進んで来ており、部署間の連携も非常
に良い状態で取れるようになって来ました。
また、従来は様々なスタイルのインテリアを提案して
いましたが、直近では提案商品も絞り込み「ナチュラ
ルヴィンテージ」という独自スタイルを提案する
ブランドに生まれ変わらせました。
ロングテール戦略と、選択と集中
リセノが目指す「ナチュラルヴィンテージ」スタイル詳説
この様に「家具を売るお店」としての機能性は、
それぞれビジョナリーに進化し続けており、さらに
まだまだ伸びしろがありますし、それでいながらも
いわゆる「油ののった状態」になりはじめていると
考えています。
ここ2~3年ほどで苦しみながらも取り組んできた
それぞれの取り組みが花開き、ブランドとして収穫期
を迎え、利益も年を追うごとに複利的な伸び方を
描こうとしています。
この状態で、小売りを本業とする会社としての王道
の道筋は「実店舗や広告などにより販売ポイントと
露出を増やすことで、売上と認知度を高め、それら
のシナジー効果・ドミナント効果を最大化して
より高い売上額を取っていく」ことだと思います。
ただ、ようやく今回の本題に入りますが、
僕はそうしません。
正確に言うと、スタッフの生活レベルの向上の為に
給与を上げていきたいという思いは、僕が長く言い
続けてきた目標のひとつですので、その為に売上額
はスケールさせていくのですが、その手段が異なる
ということです。
メディア事業にリソースを大きく割く
現在もメディア事業は、割と長くやっています。
2014年10月からオウンドメディア「Re:CENO Mag」
をスタートしていますから、現在までで丸6年の間、
休まず記事をリリースし続けています。
ただ、基本的には兼任でやっていることもあり、
速度的には週2本の記事リリースという、メディア
としては非常に緩やかなペースです。
2019年12月からは、Youtubeへの投稿も本格的に
スタートし、週1本をリリースしていますので、
現在は、合わせて週3本です。
こんな風にメディア事業自体は、緩やかにやってきた
のですが、実質的な社内工数リソースとしては、
「小売り事業 9:メディア事業 1」くらいの割合で
小売りに付属するオマケのような扱いでした。
ただ、実はメディアの効果は費用対が高く、2015年
のオリジナル家具の発売以降から徐々に顕著になって
きていたのは「メディアがあるから、お客様はリセノ
を理解してくれる」という点です。
顕著なエピソードとして1つご紹介しましょう。
2015年に東京店を新規オープンした時のことです。
当時のリセノの売れ筋ソファが2万円ほどの中、初の
オリジナル家具として約17万円という高額なNOANA
ソファを店舗展示しました。
僕もオープン日には店頭に立って、お客様をお迎え
していたのですが、オープン直後にご来店いただい
たお客様が、ふとNOANAに座られました。
そのお客様に話しかけたスタッフが、なにやら驚いた
顔の後に、お客様と談笑しています。
その後ほどなくして、レジにてお買い上げに至りま
した。その間、わずか10分ほど。
「うわーっ!午前中でもうNOANAソファが売れた!」
びっくりした僕は、お客様をお見送りした後のスタッ
フに駆け寄り「売れたの? なんか驚いてたね?」
と聞いたのです。
スタッフはこう言いました。
「そうなんです。NOANAソファについていろいろと
ご説明しようと思ったんですが、お客様が『いや、
このソファについては、ブログをたくさん読んできた
から、よく知ってます。今日は座り心地を体感にだけ
来たんです。そして、座り心地も満足なんで買いま
す。』と仰ったんです。」
この言葉を聞いて、僕は、驚きました。
ほそぼそと開発時の出張レポートや、ソファの開発
への思いを書いてきたブログを読んでくれていて、
それを目当てにお店に来てくださったお客様が、ご
来店時には商品を理解し、思い入れをもった状態で
いてくださることは、衝撃でした。
メディア事業としてRe:CENO Magというブログを
スタートしたのは、当時ITまわりで盛んに言われて
いた「コンテンツマーケティング」に着手したもの
で、お客様というよりは、検索エンジン対策のひとつ
としてスタートしたものです。
それが、他社の様に外部ライターに書かせて数を
増やしていく形じゃなくて、せっかくだから内製で
しっかりとしたものを書こうというヴィジョンの下
運営していたものです。
それが、実際にお客様の心を動かし、購入にまで
至ったことに、驚きを隠せませんでした。
その後、東京店のオープン日にはもう1名同じことを
仰って、NOANAソファはもう1台売れていき、驚き
は、確信に変わりました。
つまり、メディアは小売りのオマケではなく、
「メディアがあるから、お客様はリセノを理解して
くれる」という構造であったのです。
この気づきから、約5年。
会社としては本業の小売りの状況がバタつく中で、
リソース比率を大きく変えるまでには至ってきませ
んでしたが、それでも、メディア事業は着実に成長
を続けてきました。
現在では、製品開発の思い以外にも、コーディネート
の基本や、家具の選び方の基本といった、商売とは
直接リンクしない「インテリアを好きになる」記事
や、DIY、おすすめ店などの「インテリアを楽しむ」
記事まで、幅広くリリースするようなメディアに
成長しています。
そして、2021年。
今後の活動のリソースは、その比率を大きく変えて、
「小売り事業 6:メディア事業 4」くらいにしていこ
うと考えています。
そうすることで、ただの「家具を売る」店ではなく
「インテリアの楽しさを、もっとたくさんの人に。」
伝えるブランドになれるのだと思います。
インテリアは、購入が難しい分野です。
現在のインテリア業界のシェアを奪い合うような
「終わりのない戦いの螺旋」に身を投じるよりも、
インテリアの楽しさを、僕たちが伝える存在になる
ことで、業界自体の市場規模を大きくし、売り手も
買い手も、作り手も、みんなが Win - Win -Win に
なればいいなと思っています。
そして、小売りとメディアの両方のノウハウと
アウトプットを持つブランドとして、会社としても
大きく成長していければと思っています。
それでは、また来月に。
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2021年1月5日追記
メディア事業を強化していく具体的な動きとして、
本店サイトに「お買い物」「学ぶ/楽しむ」という
2つの入り口を設けて、並列展開としました。
ECとメディアを並列展開することで、より多くの
ユーザーに、インテリアの楽しさを伝えていければ
と思います。