こんにちは。やまもとです。
今月のテーマは「ナチュラルヴィンテージを深化さ
せる。」です。
ナチュラルヴィンテージというインテリアスタイル
は、2020年に僕たちが生み出し、設計と改編を繰り
返しながら、ひとつずつ作ってきました。
「ナチュラルヴィンテージ」スタイリングのメリットと、実践ポイントを紐解きます。
端的に言うと、
・シンプルな部屋に
・シンプルな家具を配して、
・複雑性の高いアイテムを掛け合わせる
ことで、作り上げていくインテリアスタイリングです。
インテリアスタイリングは、さまざまにテイストが
ありますが、僕たちが求める上質で、リラックス感
のあるお部屋作りのための方法論です。
このビジュアル面での定義づくりは、僕のイメージ
ではナチュラルヴィンテージの「フェーズ1」として
いて、美しいお部屋をつくるための「ビジュアル」と
しての公式です。
フェーズ1:ビジュアルの公式
独自につくる定義は、どう呼べばもっともイメージに
近いかを探りながら、呼び方をさまざま使っていて、
・セオリー
・メソッド
・定義
など、もっともはまりの良い言葉を模索中です。
今回は、新たに「公式」という言葉が、広く理解を
得られそうだと感じたので、その言葉を使って試し
に書いていきましょう。
「公式」については、算数の例えが分かりやすいでしょう。
例えば、台形の面積を知りたいときは、
「(上底 + 下底)× 高さ 」÷ 2
というのは、みんな小学校の算数の時間に習いましたね?
この公式を知っていると、台形の面積はとても簡単
に、誰でも求めることができます。
ただ、もしこの公式を知らないと、どうでしょう?
「この台形の面積って、いくつなんだろう?」
という問いに答えるのは、かなり難しいのです。
「まず長方形を作って、左右にはみ出た三角形を
それぞれ三角形の面積を求める公式で算出して、
最後に三角形+長方形+三角形で、面積の和を
求める。」
みたいな、ものすごく遠回りすることになりかねません。
知っているか、知らないかで、結論にたどり着く道
に圧倒的な差が生まれるのが「公式」です。
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ナチュラルヴィンテージとは、一見センスの集約の
ように見えますが、実は、この「公式」の集約である
と言えます。
誰でも簡単に「解」にたどり着くように、ルールを
定義しているのです。
そして、ナチュラルヴィンテージのフェーズ1で
生み出したのは、
「いかにお部屋を美しく飾るのかの選択とバランス」
というビジュアル面を主眼に置いた公式でした。
フェーズ2:利便性の公式
そして、フェーズ1で作り上げたビジュアルの公式を
紐解いていく中で「美しいお部屋を作る」というこ
とは、実は、ビジュアル的な側面だけでは完成しな
いことが分かってきました。
そこで新たに考え出したのが、フェーズ2です。
フェーズ2のテーマは、利便性です。
お部屋づくりの要素(つまりは家具など)を選ぶ際
には、適切な通路幅や、適切な照明の明るさ、適正
なサイズなどの「利便性の公式」も知っておくこと
で、インテリアはさらに見た目がよく、暮らしやす
くなるという関連性に気付きました。
このあたりのお話は、以下にもまとめています。
家具選びをはじめる前に、読んでほしい「使い心地と、見心地」と「充足感」についてのお話
つまり、ナチュラルヴィンテージというインテリア
スタイルは「ビジュアル面での公式」づくりから始
まり、暮らしの「利便性の公式」づくりと相まって、
ひとつの完成系に近づいたのです。
ここでフェーズ2が完成しました。
そして、このフェーズ1・2までの公式をわかりやすく
まとめたのが、先日発売したリセノの書籍です。
amazon 購入ページ
この書籍はおかげさまで2回の増刷がかかり、海外版
は台湾、韓国、中国語に翻訳されて、海外の書店にも
並ぶことが決定しています。
まだ読んでないという方は、ぜひ書店で手にとって
いただければ嬉しいなと思います。
そして今、「ナチュラルヴィンテージ:フェーズ3」
という主題のとおり、この公式はさらに深化を模索
しはじめています。
フェーズ3:装飾の公式
「ビジュアル×利便性の公式」としてひとつずつ作
ってきたナチュラルヴィンテージですが、これから
さらに深化を図っていこうと考えています。
それは、一言で表すと「装飾の公式」です。
ナチュラルヴィンテージにおいて、ビジュアル面で
もっとも重要で、もっとも大きな印象変化をもたらす
のが「アクセントアイテム」です。
アクセントアイテムは
- アクセントアイテム① 古びた趣のあるもので深みを与える
- アクセントアイテム② 時間とともに表情が変化するものを育てる
- アクセントアイテム③ 織ったもの編んだもので表情を与える
- アクセントアイテム④ 自然素材でお部屋に複雑性を加える
- アクセントアイテム⑤ 手仕事のあとが感じられるものでぬくもりをプラス
という5つの要素から構成されます。
書籍より
これはナチュラルヴィンテージの「ヴィンテージ」
部分を象徴しており、ヴィンテージという表現で
ありながら、その実は、
「ヴィンテージを代表とする、複雑性の高いアイテム」
というのが本来的な意味です。
シンプルなお部屋であっても、これらのアクセント
アイテム つまりは、複雑性を強く感じさせるもの
たちを配することで、お部屋が一気に華やぎます。
このビジュアル面での公式は、多くのひとたちに
受け入れていきただき、リセノのメンバーたちも、
自宅をそのように作ってくれています。
また、「ナチュラルヴィンテージ」という言葉は、
僕が考えた造語ですが、この言葉を大手ブランドが
用いるほどに影響力を持ち始めています。
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さて、非常に使い勝手がよく、内外共に順調に評価
をいただくナチュラルヴィンテージの公式ですが、
順調な今だからこそ、さらに未来へ向けて深化させ
ていく必要があると考えています。
なぜなら、現時点で2つの課題が見えてきたからです。
それは「同質化」と「再現のハードル」です。
同質化
懸念のひとつは、同質化です。
ナチュラルヴィンテージのビジュアルと利便性の公式
は、インテリアマニアに向けた特殊なアイテムが必要
なものではなく、ごくごく一般的なアイテムで再現
できるものです。
それは、
・誰もが住んでいるような普通のお部屋を、
・誰もが買えるようなアイテムで彩る。
・誰もが手軽に使えて、楽しめる公式
これが本質だからです。
そもそも論として、「公式」とはそのような側面が
あるものですから、突飛な表現や理論ではなく、普
遍的な側面が強いのです。
そのため、とりわけビジュアル面では、様々なブラン
ドが近しいビジュアル提案をしているのは、必然の
流れです。
また、利便性の公式は、人間工学や、行動学に基づく
ものですから、さらに普遍性があります。
ですから、僕たちが「ナチュラルヴィンテージ」と
して、公式の集合体として作り上げてきたものは、
公式の「解」だけを見れば、どこも同じに見えてし
まうのです。
いわゆる、コロンブスの卵です。
そのため、そもそもが模倣性が高く、リセノだから
こそという独自性を見い出だしづらく、ビジネス面
でのアドバンテージは少ないです。
一般の人たちの誰にでも分かりやすい理論ですから、
当然のごとく業界の競合他社は真似しやすいのは、
必然ですよね。
模倣困難なトレードオフを伴う活動を合わせられて
いないのが、ビジネス面での問題点でもあります。
再現のハードル
もうひとつは、再現のハードルです。
アクセントアイテムの5つの要素
- 古びた趣のあるもので深みを与える
- 時間とともに表情が変化するものを育てる
- 織ったもの編んだもので表情を与える
- 自然素材でお部屋に複雑性を加える
- 手仕事のあとが感じられるものでぬくもりをプラス
の中には「選ぶのにセンスの必要なもの」がわりと
多く含まれています。
特にオブジェやヴィンテージ物はもちろんのこと、
花瓶や植物、クッションに及ぶまで、初心者の方に
は意外とセレクトするのが難しいという声はよく
聞きます。
僕たちがさまざまな知識や感覚で理解している
・どれを買ったらいいのか
・どれくらい買ったらいいのか
・どこに置けば(飾れば)いいのか
・どの様に置けば(飾れば)いいのか
などが、僕たち自身にもしっかりと公式化できてお
らず、感覚的に行っている部分が強いので、再現に
ハードルがあることが分かってきました。
つまり、ナチュラルヴィンテージのもっとも象徴的な
部分でありながら、その公式化ができていないのです。
これでは、一般の方に広く活用してもらうための
公式としては、完成度が不十分です。
ですから、この「装飾の公式」は、しっかりと作って
いく必要があるのです。
「装飾の公式」の研究
さて、そんなわけで、僕の最近の研究テーマは
「装飾の公式」です。
公式づくりは、決して華やかなものではなく、基本
は、地道な事例の研究と考察からはじまります。
公式を生み出すためには、現行の事象における共通
項目を集め、そこから最大公約数的な要素を見出し、
その事象の原因を突き止めなくてはなりません。
この作業は、僕の特殊能力的に強いところだと自負
しているので、成果に向けた研究のしがいのあると
ころです。
自分の特性を知ると、活き活きと活躍できる。
昼夜を問わずに常に考え、多くの書籍や媒体を参照
し、自らも実践し、人に話し対論をもらい、そこか
ら共通項を探っていくなかで、ひとつ最大公約数を
発見しました。
それは「上級者のお部屋表現の共通項」です。
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媒体に登場するようなインテリア上級者のご自宅には、
- こだわりをもって選ばれた家具は「部屋の主役」
- 個性を感じさせる外しの「名脇役」
- 住んでいる人の個性を詰め込んだ「蒐集品」
という3つの要素が共通して入っているということです。
さまざまなお部屋では、上記の3つの要素により、
お部屋の装飾に強烈な個性を感じさせます。
ナチュラルヴィンテージに大きく影響を与えたリセノメンバー邸
ですから、この3つの要素のバランスや選択法を紐解
くことが、公式を作っていくうえで、ひとつのヒント
になると考えています。
そして「同質化と、再現性のハードル」をクリアする
ために、これらのアクセントアイテムについて、実際
に手に入る様にすることも、大きな課題です。
この課題をクリアできないと、いくら公式が美しくと
も、使えない、使いづらいものになってしまいます。
これは、実はとても重要な要件です。
ファッション誌でのあるあるで例えると、
「あっ! このモデルが付けてるアクセサリーめちゃいけてる!」
「なんだよー! モデル私物かよー。」
っていうあれですね。
せっかくおしゃれに興味をもって、雑誌で良いものを
探していて、自分が欲しいものが見つかったのに、
手に入れようがなくて、諦める。
残念ですよね。
それが手に入れば、その日から嬉しい気持ちで過ご
せるのに.... という感じです。
媒体に出てくるような上級者のお家にあるものは、
このパターンがかなり多いですよね。
ですから、リセノでは、フェーズ3の公式を作るにあ
たって、この面も同時に考えて、嗜好性の強い装飾
の分野だからこそ、再現できることを重視して、
解決していきたいと考えています。
まとめ
では、まとめます。
「ナチュラルヴィンテージ」の変遷は
フェーズ1:ビジュアルの公式
↓
フェーズ2:利便性の公式
↓
フェーズ3:装飾の公式(と、再現性)
というフェーズ3に入りました。
フェーズ1と3の違いは、ナチュラルヴィンテージの
うち、フェーズ1は「ナチュラル」にあたる空間の
ベースとなる要素に主眼を置いていたのに比べて、
フェーズ3は「ヴィンテージ」部分に主眼を置いて
います。
フェーズ1・2で定義してきた「空間と利便性の公式」
をベースに、次はだれもが楽しめるお部屋の装飾に
ついて、公式を作っていきます。
しかも、それは「再現性」「誰でも手に入る」の状態
を目指します。
具体例をひとつあげると、
公式:
・アクセントアイテムとしての「花瓶」の提案
・どの場所に、どのくらいのサイズが適正か
・どの花を生けるとバランスが良いか
再現性:
・複雑性の高い花瓶がリセノで買える
・ドライフラワーがリセノで買える(生花なら近所で買える)
といった感じでしょうか。
これらをお部屋作り全体を見渡しながら、初心者の方が、
家具や大きなインテリアの空間づくり(フェーズ1・2)
↓
お部屋を美しくする装飾の楽しみ(フェーズ3)
というインテリアの楽しさを、もっと感じられるよう
に公式を丁寧に作っていきたいと思います。
すこしずつサイトでもひも解いていきますので、
ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。
インテリアを通じて、すべての人や身近な人が、
大変な日々の中に、少しでも心が安らぐ時間を
持てるように。
まだまだがんばっていきます。
では、また来月に。