
家具を10年デザインしてきて思うこと
2023年 11月28日 カテゴリー:考えてること

こんにちは。やまもとです。
今月のテーマは、家具デザインについてです。
僕たちがオリジナル家具「Re:CENO product」を
リリースしたのが2014年のこと。
来年で、丸10年を迎えることになります。
気付けば、10年。早いですね。
それまでは、国内の既成家具をメーカーさんから仕
入れて販売していたのが活動の全てで、その他には
ごく一部だけ安価な家具を企画したり、既製品の色
だけ変えて作ってもらったり... という感じでした。
そんな典型的なWebセレクトショップだった状況で、
次の一手として「自分たちの欲しい家具を作ろう」
というテーマのもと、家具デザインを専門で学んだ
様なメンバーもいない中、手探りでひとつ、またひと
つと企画してきたのが、Re:CENO productのはじまり
です。
思い起こせば、最初にリリースしたのは「NOANA」
というベッドでした。
Re:CENO product 最初の製品。いまも現役です。
国内メーカーさんから仕入れていたベッドが廃番と
なり、「せっかく人気なのにもったいない」という
ことで、近いデザインのベッドを作ったというのが、
はじまりです。
モノづくりの知識もないままに、家具メーカーさん
と一緒に極寒の2月の中国・大連に趣き、依頼してお
いたサンプル確認をし、その場で脚を切ってもらった
り、細かな仕様を変えてもらったりと、懸命に製作
したことを、昨日のことのように思い出します。
このベッドがおかげさまでスマッシュヒットし、
次なる企画として着手したのが「NOANAソファ」です。
NOANAソファー。こちらもいまだ現役です。
当時、2万円台前半の「合皮ソファ」が圧倒的な人気
商品であったリセノにおいて、NOANAソファーは、
16万8,000円という高額な価格でした。
企画当初は12万円程度で... とはじまったのですが、
こだわりを詰め込むほどに高額になり、最終価格は
わずかな利益残しでも、この価格に。
製作過程では、海外工場では思っているような品質
に辿り着けずに、いったん試作を中止し、国内で再度
サンプリング製作から始めなおすという手のかかり
様でした。
当時、名古屋にいらっしゃった木工家具作家さんに
依頼をして、座面の高さを細かく調整していったり、
理想のフェザーの座り心地を研究するために、部屋中
にフェザーをまき散らして、何度も調整しました。
木工作家さんお手製の座り心地研究機
また、それでも理想の座り心地に辿り着けず、自身が
持っている超高級フェザーソファーの座り心地を研究
するために、中身を切り割いて、研究したりしました。
長い時間をかけて最終的に出来上がったソファーは、
とても良いものだという自信がありながらも
「僕たちのお店で、こんな高額なソファーが売れるんだろうか‥・」
という大きな不安があったものです。
それでも、できるだけその良さを伝えようと、発売
までに、オウンドメディアにて何度も製作過程を紐
解くブログをリリースし、その魅力を伝える努力を
重ねながら、東京店オープン時に、満を持して店頭に
並べ、お客様の反応を見ることに。
NOANAソファーのブログ(古いものを参照ください)
そして、この東京店オープン日こそが、その後に僕た
ちがオリジナル家具に舵を切る、大きなきっかけに
なったのです。
オープン初日、11時にオープンした東京店で、わずか
1時間の正午までの間に、なんと、このソファーが2台
もお買い求めいただいたのです。
接客したスタッフにお客様がNOANAソファーを選ん
だ理由を聞いたところ
「自宅でブログを読んできて、その丁寧なものづくり
にすっかりと惚れてしまい、今日来ました。
座ってみたら、イメージしていた通りのソファー
だったので、即決しました!」
というお声でした。
この言葉が、自分たちのものづくりのやり方と伝え方
が間違っていないという自信になったのです。
10年前に起こったこの日の出来事は、今でもとても
印象深く心に残っています。
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それから、約10年。
今でも、Re:CENO productのほぼすべての家具は、
僕自身が企画・デザインしていて、その総数は150種
を超えました。
また、企画・デザインのコンセプトも
・心地のいいデザイン
・長く使える工夫
・適切な選択
という当初に掲げたコンセプトに則り、変わること
なく、10年間真摯にものづくりをおこなってきました。
Re:CENO product|コンセプト
家具デザインというと、みなさん、どのような
仕事だと思われるでしょう。
それは、華やかで、センスの集約のような仕事と
思われるかもしれません。
また、プロダクトデザイナーを目指す学生さんは、
手を動かして造形をしたり、CADなどを使ったり、
テーマ設計の仕組みを学んだりと、様々に技術を
磨かれていることでしょう。
ただ、僕が思うものづくりの大切なポイントは、
造形や技術ではなく、求められるものを見立てる
というのが大事だと思います。
これは10年の経験を得た、僕なりの答えです。
世の中の家具ブランドは、いまだにとかく価格を下げ
ることに注力したり、デザインの美しさを主張したり、
似たようなものを作ったりしています。
それは「最高を求める戦い」であり、答えがなく、
模倣とも格闘するとても苦しい戦いです。
僕は、プロダクトデザインが専門ではないですが、
家具をデザインするのをブランド内でのひとつの役割
として、自分自身の強みをうまく活かすような家具
づくりをしてきました。
それは、大きく言うと「不の解消」です。
こんな家具があったらいいな、こんな家具だったら
ほしいな、こんな家具があったら毎日が気持ちよさ
そうだな、そんな思いを乗せた「見立てる」を中心
に据えた「顕在化していないマーケットイン発想」
のデザインです。
Re:CENO productの企画経緯とコンセプト設計
そのことを10年間ぶれずに懸命に磨き続けたことが
僕のプロダクトデザインの特性であり、その成果が
いまのリセノのオリジナル家具に表現できていると
思っています。
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また、僕の家具デザインが、技術やセンスに傾倒し
ないのには、もうひとつ理由があります。
それは、家具デザインは、1950年~の北欧デザイン
がある意味の完成系であり、そこを超えるものは多く
ないと思うからでもあります。
この時代のテーブルやチェアー、ソファーや収納家具
にいたるまで家具のデザインは、とても美しく、造形
が洗練されています。
それは、現代でも変わらぬ美しさであり、ある意味で
は新しい家具のデザインはいらないのではと思うほど
です。(現代でも格別に人気がありますね)
だからこそ、僕は「お絵描きとしての美しさ」を
勝負の土俵とするような家具はデザインしません。
現代の暮らしに必要な家具を作るほうが良いのです。
それは、
・現代の暮らしにフィットする
・現代のテクノロジーが入った
・価格も適正な
・一緒に年を重ねられる
といったところがポイントかなと思います。
美しいだけでなく、使い心地や、耐久性、価格フィッ
トなどをいろいろと兼ね備え、それでいて使い捨て
ではなく、思い出とともに長く長く使い続けるだけ
の品質や可変性を持った家具。
そして、日本の暮らしに合う家具。
そんな家具を作って、世の中の人々の暮らしの幸せ
な時間をアシストしたい。
これこそが、僕の家具デザインポリシーです。
10年間家具をデザインしてきて、その思いを一度も
変わることなく続けられたことを、いま誇りに思い
ます。
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そして、次の10年。
リセノにおいては、ますますオリジナル家具の人気が
高まっています。
ファブレスでの自社生産体制も整い、より高い品質の
家具を、スムーズかつ適正に、多様に作れるようにな
ってきています。
僕自身は、次の10年も変わらないポリシーにて、家具
デザインを続けようと思っていますが、会社としては
同じポリシーをもって、家具デザインを行うメンバー
が増えていくことを想定しています。
僕とは異なる出自と強みを持ち、専門的な技術や知識
を基に、理念に沿った家具をデザインするメンバーが
増えていくといいなと思っています。
今年からは新卒採用もスタートしますから、建築や
プロダクトデザインを学んだ優秀な若者も入社して
くることでしょう。
10年の間に培い、確信をもったリセノらしい家具デ
ザインをチームの発信に発展させ、より多くの暮らし
を豊かにしていくように、次の10年を歩みたいなと
思います。
期待していてください。
では、また来月に。